〜各ブランドで違うカシミヤの風合い〜どうして違うの?
カシミヤニットにも色んな風合いがある
『私はヨーロッパのカシミヤの風合いが良い』とか、『イギリスのカシミヤがやっぱり一番』という人がいらっしゃいます。
その人のお気に入りがヨーロッパのどこかのメーカーやイギリスのメーカーが作ったものだったんでしょうね。
でもカシミヤセーターの製造工程を理解していたら、ヨーロッパとか日本とかの違いではなく、ブランドごとや品番ごとに風合いは違うということが解ると思います。
風合いの違いもデザインの違いと同じようにそのブランドがどんなこだわりをもってどんな風合いにするかも主張の一つなんです。
皆さんが店頭で手にしたときに、『如何にも柔らかくフンワリしているもの』や、『カシミヤの柔らかさは有るけどちょっとコシが強い』等々、慣れてくるとカシミヤにも色んな風合の商品があることを理解されると思います。
風合い(やわらかさ・肌触り)=編み方×洗い方
風合いの出し方にはいろんな方法がありますが大きなポイントは二つです。
それは編地の度目(どもく)と縮絨(しゅくじゅう)です。
度目とは、ニットを編むとき緩く編んだりつめて編んだりする「編みの度合い」のことです。
粗めに編むことを「度目を甘くする」と言います。
粗く編むと目付けといって糸の量も少なめに上がりますし、度目を詰めて編むとしっかりした編地になりますが糸を使う量(目付け)も増えます。
どの程度の度目で編むかはブランドとしての大事な主張の一つです。
二つ目の縮絨とは、わかりやすく言うと「水洗い加工」です。
編み上がった後のカシミヤニットは硬い風合いです。(これがカシミヤ!?と驚く人が多いほどです(笑))
これを水洗い加工をすることで、皆さんの知っているあの柔らかくふんわりとした風合いに変化します。
★風合いの方程式=度目(編み方)×縮絨(洗い時間・洗濯機の回転数)
粗く編んで強めに縮絨をするとそれこそふんわりになるし、つめて編んで弱めに縮絨すれば固めの風合いになります。
風合いは柔らかければいいというものでもないし、硬すぎてもカシミヤの良さが発揮されないし、編地の度目と縮絨のバランスが重要です。
このバランスが各ブランドによって違い、ブランドのカシミヤニットの個性に繋がっています。
(余談)スーツの着心地を確かめる、試着のプロ
イタリアのスーツを作っているメーカーでは、試着だけを仕事にしている人がいるそうです。
毎日毎日スーツに袖を通して出来上がったスーツの着心地をチェックするんだそうです。袖を通した途端に『チョットここが違うとか、不自然とか』服の出来具合が分かるそうです。そして、『今日は何事もなかった』というのが一番いい仕事が出来た良い日で満足感を覚えると言う話でした。
毎日ものづくりをしてるプロの人たちが気付かなかった見落としを見逃さない技量と経験をもったプロ中のプロであることはいうまでもありませんが、数字や見た目には表れない着心地はとっても大事なことだ思います。
UTOも、セーターを着ていただいたとき、違和感がなく、長すぎず短すぎず、適度な余裕を持って自然に見えるというのが一番良いセーターだと思っています。セーターは伸び縮みがしますから布帛の服より着心地がいいのは当然ですが。
自然体で、着ていて気持ちいい上品なカシミヤセーターを目指し、日々編み仕立てています。